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インゼルサラブレッドクラブが“エネイブルの甥”再募集馬発表!初年度の手ごたえ、そして将来の展望は?――代表・大住拓哉氏に聞く

おはなしコラム

2022/3/25 06:10

2021年9月、彗星のごとく設立された「インゼルサラブレッドクラブ」。“武豊騎手で凱旋門賞制覇”という夢を掲げる馬主・キーファーズからのサポートを受けるとあって、1/500口募集馬は15頭すべてが満口と、多くの競馬ファンからの支持を受けている。

1/50口募集であれば、国枝厩舎予定のフリーティングスピリット20(父・キタサンブラック)、池江厩舎予定のブラッサムドの20(父・Justify)にまだ残口がある。さらに3月18日には、“エネイブルの甥”にあたるコンシダレイトの20(父・Nathaniel)の再募集(500口)が発表された。

募集から約半年を経て、各馬の育成状況や期待度はどうか。また、クラブはどこを目指していくのか。同クラブの大住代表と、湯日氏に、その展望をお伺いした。

インゼルサラブレッドクラブ 代表・大住拓哉氏

――まずは、初年度の先行募集を終えての率直なご感想をお聞かせください。

大住:万全の準備をして初年度の募集に臨んだというのもありましたが、反響に関しては予想以上でした。ありがたいことです。要因としては、もちろん日本を代表する生産牧場である社台ファーム、ノーザンファームから大きなご協力を得られ、話題性があったというのもありました。

加えて、クラブ設立に支援いただいているキーファーズのファンの方が「こんなにもおられるのか」と驚いたのは正直な感想ですね。

――確かにSNSでは、一口馬主経験者のみならず、多くの方が検討していた印象があります。

大住:我々の特長のひとつとして、IFF(Insel Fun Fund 2021)というオリジナル商品があります。1/500口募集対象の15頭をワンパッケージに、募集価格の10%を2,500口で割ったファンドなので、1口18,440円というリーズナブルな出資金額に抑えることができました。

過去、調べる限り他のクラブさんでもこうした取り組みはなく、主に一口馬主初心者の方々から多くの好意的なお声をいただいたのも、嬉しい限りでしたね。

――インゼルさんの勝負服をまとめて応援するんだ、と思ってもらえれば分かりやすいですもんね。

大住:15頭もいれば“毎週どこかの競馬場で出資馬を応援できる”といった体験もできるかもしれません。そうした「応援する喜び」をたくさんの方々に体験いただけたら、さらに新しい楽しみ方を知っていただけて、競馬の裾野も拡がっていくのではないかなと。

キーファーズや、主戦の武豊騎手の応援団がたくさんいるように、インゼルサラブレッドクラブを応援していただくきっかけになるのではと期待しています。そして、この流れを失わずにこうした商品をこれからも開発していきたいですね。

――それにしても、先行募集ではほとんどの馬が募集口数を上回る応募があり「抽選」となったのにはびっくりしました。

大住:日本で突出した成績を残している社台ファーム、ノーザンファームをはじめ、有力な各牧場と良好な協力関係を築けたというのが、まずは大きいです。

さらに、キーファーズの協力もあり、ディープインパクト産駒であるSaxon Warrior産駒、日本でも活躍馬を多数輩出しているFrankel産駒と、クールモアスタッド (Coolmore Stud)など海外の牧場からも募集馬を提供いただけたことで、他クラブさんに劣らないような魅力的なラインナップを揃えられたからだと思います。

――世界的な生産者であるクールモアの馬に、日本で出資できるのは魅力的ですね。

大住:実際にそういったお声もいただいていて、非常に励みになります。我々はバイヤー系のクラブですので、海外の牧場も含めて幅広い協力関係を築いていきたい。

そうした意味では、厩舎も有力な調教師さんに預託させていただけている点も追い風だと思います。将来的に、3-4年後には募集頭数も増えていくということになるかと思いますので、しっかりと初年度から結果を出して、毎年魅力的な募集馬をご提供できればと考えています。

――ここ数年、競馬は非常に盛り上がっていますし、結果が出ればますます注目されそうです。

大住:競走馬の市場も活況ですし、馬券も売れている。「ウマ娘」のような、競馬の裾野を広げる大きなインパクトのあるコンテンツも出た。そういったタイミングでクラブを設立できたというのは、ある意味本当にラッキーでした。

「新たな一口馬主クラブを立ち上げる」となったときにJRAから期待されたのも、まさにこれまで競馬に興味のなかった方へ、その魅力を伝えてほしい、ということ。そうした意味では、前出のIFFがこれだけ支持をいただいたというのは、とても自信になりました。

2年目、3年目と我々の特長をさらに出して、さらに競馬界に貢献していきたい。さらに将来的には、アメリカやヨーロッパでも活躍できるような馬を輩出したい。そういう結果を出せるように、我々も努力して牧場や調教師の先生方としっかり連携を取って、初年度からしっかりと対応していければと思います。

ブーケトウショウの20(父・ハーツクライ、馬名・クリダーム)

――ありがとうございます。ここからは、湯日さんに初年度の募集馬についてお伺いさせてください。3月時点で、もう既にトレセン近郊牧場まで移動している馬がいると聞きました。

湯日:ブーケトウショウの20(父・ハーツクライ、馬名・クリダーム)ですね。1歳時からトモがしっかりした馬で、これは父よりも母の父・サクラバクシンオーが出てくるなというのが第一印象でした。自分自身としてもバクシンオーがかなり好きなので(笑)そういうひいき目で見たのかもしれませんが。

その時点で、預託をお願いした須貝先生とも「これはかなりスピードがある馬だし、早めに入厩させて夏デビューさせられるんじゃないか」と話していたくらいです。そこから全くアクシデントなく進んで、2月に北海道から吉澤ステーブルWESTに移動させてもらいました。

――2月の移動というのは、本当に早いですよね。さらに、他の馬も目立ったアクシデントなく、本当に順調だなという印象を受けます。

湯日:各生産牧場の努力、というのが非常に大きいと思います。社台ファーム、ノーザンファームはもちろんのこと、日高の牧場も土壌・草の改良から、繫殖の質の向上まで、本当に一生懸命やっておられる。結果、本当に良い馬ばかりをご提供いただけた、ということなのかなと。

クリダームにしても、真面目で余計なこともしない理想的なサラブレッド。生産(杵臼牧場)、育成(吉澤ステーブル)ときっちり対応していただけた結果だと思います。須貝先生とは「馬房の都合がつき次第、ゲート試験まで進めてみようか」とも話しています。

フリーティングスピリットの20(父・キタサンブラック、馬名・シュバルツガイスト)

――そうした順調な中で、まだ出資可能な馬がいますね。まずはフリーティングスピリットの20(父・キタサンブラック、馬名・シュバルツガイスト)について教えてください。

湯日: 2020年の当歳セレクトセール購買馬(1億2,100万円・税込)なんですが、とにかく当歳のころから雰囲気が良く、ノーザンファームでも「素晴らしい馬だ」との評価を下しておられました。

それから1歳、2歳と成長してきても、本当に馬体のバランスが崩れていない。良い形のまま筋肉質に成長してきているなと思います。現在は週2日が2,700mの普通キャンター、残りの日は周回コースから屋内坂路コースで1本をハロン15~17秒のキャンターを消化しています。

騎乗スタッフに聞くと、とにかく常に前向きさがあって、ある程度の時計で走ってもフォームに乱れがないということです。やればいくらでも動きそうなので、やりすぎないように注意しているほど。まだまだ走りに余裕がありそうです。馬体重も476kgと、理想的なサイズではないかなと。

――預託予定の国枝先生も、初年度産駒から活躍馬が出ていますし、期待されているのではないでしょうか?

湯日:先生も「父は長距離のイメージがあるが、この馬はマイルくらいから十分やれるんじゃないか」と仰っていました。母が欧州のチャンピオンスプリンターですからね。一口は250万円と高額ではありますが、もう半数以上売れていますし、正直かなり期待しています。

キタサンブラック産駒も、最初は「どうなのかな」と思っていましたが、初年度から重賞勝ち馬(イクイノックス)が出ましたからね。能力があるなと思いましたし、今後間違いなく期待したくなる種牡馬の1頭だと感じています。

ブラッサムドの20(父・Justify、馬名・オーサムリザルト)

――もう1頭、残口があるのはブラッサムドの20(父・Justify、馬名・オーサムリザルト)ですね。

湯日:実は2週間ほど前に、預託予定の池江泰寿先生の感想を伺いました。「当初見たときと変わらず、牝馬ですが馬体にボリュームがあって良い雰囲気の馬ですよね」と。距離も短いところではなく「中距離くらいから使いたい」、という見立てのようですね。

現在は三嶋牧場在厩で、現在はBTC(軽種馬育成調教センター)で屋内周回コースを4周、そして週1回屋内坂路コース2本をラスト1F17~15秒で順調に乗られています。焦って使う馬でもないですが、順調に乗っているので4月あたりにトレセン近郊に連れて行こうかという話をしました。

――父Justifyの初年度産駒です。市場では世界中で注目を集めていましたよね。

湯日:アメリカの三冠馬ですからね。父のレース振りを見ていても「すごい」の一言。そうした優秀な遺伝子を受け継いでいるので、楽しみなんじゃないかなと。こちらも一口160万円と高額なのですが、すでに半数以上は売れていて、魅力ある一頭です。芝・ダート問わず活躍してくれないか…と期待しています。

コンシダレイトの20(父・Nathaniel)

――さらに、先行募集時に募集取り止めとなったコンシダレイトの20(父・Nathaniel)が再募集されると3月18日に発表がありました。現在の状況を教えてください。

湯日:当初カタログにも掲載していたのですが、10月に疝痛を発症し開腹手術を行ったため、募集を停止させていただきました。術後は順調で、11月に曳き運動、1月末に騎乗調教が再開でき、BTCの周回コースで軽いキャンターを乗りこまれています。脚元は元々問題なく、今後順調であれば近日中には坂路コースでの調教も開始できることから、再募集ということになりました。

実は当初は1/50口募集で、ほぼ満口に近いご応募をいただいていたんです。こうした経緯となりましたが、馬自体は本当に良いので「よりたくさんの方に機会をご提供できれば」ということで、募集総額を5,000万から4,000万に下げ、口数も1/500募集(一口8万円)ということになりました。(3月25日17時より先着順)

――多数有力馬を輩出する友道厩舎に預託予定ですし、何といっても“エネイブルの甥”という血統も魅力的ですね。

湯日:エネイブルは、あの凱旋門賞を2連覇した馬ですからね。そうした背景の募集馬を、芝中長距離で非常に活躍の目立つ友道厩舎に預託できる。それだけでも非常に期待してしまいます。実際に、キーファーズの馬でも優秀なスタッフさんがきっちり仕上げてくださり、相性も良いですからね。この馬もそれにあやかれたら、と思います。

現在、馬体重は536kgと余裕があり、休養が長かった分どうしても仕上がり面で遅れを取っているのは否めません。ただ、北海道もこれから暖かくなりますし、三嶋牧場で上手く飼い葉や運動量なども調整していただき仕上げを進めていますので、どんなふうに変わってくるか楽しみにしたい馬です。順調に進めば、2歳の秋以降のデビューが見えてくると思いますよ。

この時期に日本、米国、欧州の良血馬に出資可能ということで、なかなかこうしたクラブも珍しいんじゃないかと(笑)。ご紹介した馬たちをはじめ、順調に進んでいる募集馬が本当に多いので、また口取りが再開されて、多くの会員さんとウイナーズサークルで喜びを分かち合えることを願っています。

――ありがとうございます。最後にお二方に、来年度の募集馬のヒントなども伺いながら、今後のクラブ運営の意気込みをお聞かせいただけたらと思います。

湯日:長らく日本競馬を支えてきたディープインパクト産駒、そしてハーツクライ産駒が、21年度産募集からは姿を消します。しかし、日本の種牡馬、繁殖牝馬のレベルはそうした馬の貢献もあって本当にレベルが上がってきている。新種牡馬を含め、様々な馬にチャンスが生まれてくるので、選ぶのが非常に楽しいラインナップになると思いますね。

大住:初年度募集で非常に人気のあったSaxon Warrior産駒のような魅力ある馬を、今年も海外の牧場からラインナップできればと考えています。もちろん社台ファーム、ノーザンファーム、その他有力な牧場含め、今年以上の募集馬リストを作れると思っていますので、引き続き期待していただけたら嬉しく思います。

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