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【天皇賞・秋レース回顧】前半1000mである程度勝負決する
2018/10/29 14:36
レイデオロが総合力に優って天皇賞・秋を見事に制覇した。ルメール騎手は3週連続G1勝利でこの男の勢いは止まることを知らない。もはや神騎乗などという言葉では片付かない何か別次元のところに行ってしまっている感じすらする。レース全体を振り返ると今回も絶妙なポジショニングでレイデオロを導いていた。
前半59.4、後半57.4と落差2秒の時計全体で言えばスローペースという判断になるが、勝ちタイムが異常な速さ。今回の1:56.8という記録は2011年のトーセンジョーダンが残した1:56.1に次ぐ怪時計。見方を変えればハイペースと言える。まさに総力戦ならぬ、トップレベルのポテンシャルを求められる戦いになる中で、前半1000mのポジショニングが運命を分けたように思う。
キセキが先手を奪い、好スタートのヴィブロス、アルアインと飛び出して行く中、ステファノス、ミッキーロケットと続いてその後ろにレイデオロ。出たなりの感じから促して中団やや前目の位置。更にその後ろに2着のサングレーザーが続いた。1番人気のスワーヴリチャード はスタートでマカヒキと激突、挟まれてレースが終わってしまった。後方でスワーヴと並ぶようにマカヒキも追走で手一杯。
武豊騎手のコメントで「ペースが緩むことがなく脚を溜められなかった」という通り、前半のラップタイムを見ると12.9-11.5-11.8-11.5-11.7。スタート直後のカーブまでを除けば、終始11秒台半ばというタイトなタイムでレースが進んでいる。それに加えて後半が更に2秒速い57.4でまとまっているわけだから、後方から差を詰めるなどほぼ不可能だった。全体の隊列が直線まで動かなかったのは、時計的に詰められなかったということなのだろう。時計勝負が合わない馬にとって脚が溜まらなかったというのは納得が出来るところだ。
秋華賞に続き今回も川田将雅騎手の逃げは本当に絶妙だった。馬場を読み切り、キセキのポテンシャルを目一杯引き出した好騎乗で、これで負けてしまっては仕方がないというレベル。後半1000mのラップが11.6-11.3-10.9-11.6-12.0。3コーナー過ぎのラスト4ハロン目でペースアップ。時計上は直線入り口にかけて後続を引き離しにかかっている。早めにペースをタイトにしていった分、これでは後ろも差が詰まらずに苦しかったに違いない。残り100mまで先頭に立っており、後ろの脚を封じつつ逃げ残るという見事なレース運びだった。
勝ったレイデオロはもう素直に褒めるしかない。今回は初めての58キロ、中間は追い切りを中止するアクシデント、前走で復活の勝利を納めていたが、どうなのだろうという部分の方が大きかった。このペースを好位やや後ろから差し切ってしまうのだからただただ総合力の高さというべきだろう。そして乗れているルメールの手綱捌きを加味すれば結果的に負ける要素はほぼなかった。次戦も非常に楽しみになった。ルメール騎手はお手馬が色々かち合う中でどれを選択するのか興味深いところだ。
サングレーザーは-12キロで究極の仕上がりだったのかもしれない。これだけの時計勝負の中でレイデオロの後ろから上がり最速33.4で差し込んできた。モレイラ騎手の談話では「手応えも良くスムーズだった」とあり、能力の高さを走りで証明した。むしろ距離延長さらに行けるか?という気もしなくもなく、マイル路線に戻るのかどうなるのかも気になる。この走りなら次も勝ち負けだろう。
マカヒキは前述の通りで、時計勝負がまったく合わなかったという事なのではないか。絶好調からは遠いのか、イマイチはっきりしない部分が多いが、鞍上のコメントを推し量るとそう思わざる得ない結果になった。同じ2000mでも札幌記念では結果を出しているだけに小回りの中山、有馬記念のようなコース形態ではチャンスがあるのかもしれない。
スワーヴリチャードは大敗してしまったが、春の安田記念で時計勝負にも十分対応していた。まともならどうだったのか…というのは気になるところ。次はジャパンカップになるようだが、流石に勝ち負けの競馬をしてくるのではないかと思う。注視したい。