競馬コラム
【有馬記念レース回顧】タイトルホルダーに本来の走りは見られず
2022/12/26 06:10
クリスマスグランプリを制したのは3歳馬のイクイノックスだった。前走の天皇賞・秋では強烈な差し脚で古馬勢を一蹴、東京向きの差し脚かとも思われていたが、今回はトリッキーな中山2500mをソツなくこなしての完勝劇。来年はこの馬が全てを持って行ってしまうのではとも思わせるほど、隙のない走りだった。
イクイノックスは好スタートを決めて行きっぷりの良い追走。馬の後ろに入れてグッと我慢し、勝負どころでは抜群の手応えで大外から馬なりで進出。解き放たれたこの馬の走りについて来れるライバルはおらず、あっという間に直線の入口から後続を突き放しての完勝だった。ラスト3ハロンが12.2-11.4-12.3でまとまっており、馬なりで先頭に並びかけて行った同馬の走りは、タフな中山の馬場を踏まえるとかなりのものだったと思われる。来年はこの馬が中心であることに疑いはなさそうだ。
2着の福永祐一騎乗、ボルドグフーシュは見事な差し脚だった。やはりスタートダッシュは効かずに戦前の予想通り後方からの競馬。折り合いは良さそうで後方2、3番手から虎視眈々と機を伺い、ラスト800mからようやく進出を開始。大外からロングスパートを決めて勝ち馬から2馬身半差の2着だった。しかし、3着には1馬身半と完璧に突き放してはおり、菊花賞からさらに成長、今回は勝ち馬が強かったが、この馬の成長力にも素晴らしいものがあった。前走の菊花賞でもほぼ勝ちに等しい 2着であったように、来年の長距離路線ではさらなる活躍が期待される。
3着に入ったジェラルディーナはスタートで痛恨の出遅れ。結果的に2着馬と同じような位置で末脚を温存する格好となった。勝負どころでもワンテンポ早くボルドグフーシュに外から仕掛けられる形で、そこから内をさばいて抜けてくる展開となり、鞍上のリカバリーに応えてなんとか馬券圏内に飛び込んだ。今回に関してはスタートに尽きると言えそうだ。
4着のイズジョーノキセキは現役屈指のメンバーが集まった一戦で、低評価13番人気を覆す激走。絶好のスタートを決めて、終始インの6番手付近で死んだふり。脚は完全に溜まっており、勝負どころでも手応えは絶好。ちょっと狭くなるような場面もあったが、怯むことなく堂々と抜け出してきた。鞍上の手綱さばきと相まった“ファンタスティック“な走りだった。
前進気勢のある走りを見せる
5着のエフフォーリアは勢いのある返し馬で復活を予感させた。前半から好位5番手付近で流れに乗り、今年の中では一番状態も良さそうだと感じさせる前進気勢を見せていた。勝負どころでも先頭に並びかける場面はあり、先行勢でも唯一掲示板に残った。徐々に復調しているのだと思われる。敗れはしたものの手応えを感じる5着だった。
【写真】有馬記念レース写真はこちら掴み切れぬ敗戦
今年G1・2勝で凱旋門賞帰りとなったタイトルホルダーはまさかの9着敗退。本来の力は発揮できなかった。スタートからのダッシュもやや鈍く見え、なんとか先手は奪い切ったものの勝負どころでも今ひとつという行き脚。最初の1000mを61.2。昨年は番手からの競馬でそれよりゆったりとした展開にも関わらず、突き放して行けずに、スピードの乗りも悪いという印象だった。後続の押し上げも早く厳しい展開でもあったが、ハイペースでも自ら突き放して押し切れる能力がある馬。阪神の方がハイパフォーマンスを出している印象ではあるものの、それにしても負け過ぎ感は否めない。結果としてタフな競馬になった凱旋門賞のダメージが、見えないところで残っていた可能性も有り得るのだろう。
凱旋門賞ってエグいね。
2022.12.26 ミスターフランス