競馬コラム
戸崎圭太騎手インタビュー前編・初の著書『やり抜く力』に込められたメッセージ 「やりたいことを貫いていけたら道が拓ける。やり抜こうよ、と」
11時間前
戸崎圭太騎手初の著書『やり抜く力 天才じゃなくてもトップになれた「ベリベリ」シンプルな理由』が3月26日に発売される。これに際し競馬のおはなし編集部は、戸崎騎手にインタビューを敢行。インタビュー前編では、数々の困難を乗り越えてきた騎手人生を振り返った一冊をさらに深掘りし、自身の信念や思考法について尋ねてみた。
――まずはご出版おめでとうございます!本を出さないか?と聞いたときの最初の気持ちから教えてください。
戸崎騎手「昨年の夏くらいにオファーをいただいて、正直意外でした。自分が本を出すとか…。出せるような人間じゃないというか(笑)。驚きでしたし、僕でいいのかなと思ったりもしました。でも、機会をいただいたので「ぜひとも」ということで。素直に嬉しかったですね」
――帯には「Amazonランキング 本・競馬カテゴリで第1位」と出ていて、ファンの期待も大きいようです。
戸崎騎手「いやー、そんな。もう有難い限りです。でも僕自身も良い本に仕上がったな…というか、こんなにできるものなんだというのは感動なんですけど。ぜひ読んでいただきたいなと思いますね。そのまんまの戸崎圭太を伝えていますので」
――大変面白く読ませていただきました。本をまとめるにあたって意識されたことというのは。
戸崎騎手「特に意識したというのはなく、もうそのまんまを伝えています。時系列を話していって、あらためて振り返って『こういうこともあったな』という気付きはありました。あとはお手伝いしていただいたライターさん、編集者さんたちのお力で。それがなかったらこんな良い出来にはならないです(笑)」
――本書では大怪我をされたエピソードや、「自信がない」というご自身の内面なども包み隠さず語っておられます。苦しかったことを振り返るというのはジョッキーにとってどんな作業でしたか。
戸崎騎手「実は『黒歴史』だとは思っていないんです。それが僕ですし。大怪我とか、本当はしなければ良いんでしょうけど、しちゃったんだから、もうそこを考えても仕方がない。じゃあ今やるべきことは何かな?と考えられるのが強みかなと思いますね」
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プロ野球選手を目指していた中学生時代「勘違いではあるんです、常に(笑)」

――そのように思えるというのは、本書のタイトル『やり抜く力』にもつながってくる気がします。
戸崎騎手「僕の中では『やりたいこと』が決まっていて、ジョッキーとして『リーディングを取りたい』、そもそも『馬に乗りたい』というのがあるので。ケガだったり、うまくいかなかったりすることもあるんですけど、ひとつ『やりたいこと』がある。じゃあそれに向かって『今何をやるべきか?』とシンプルに思えるというか。それで、そこに突き進んでいけるというのはひとつ強みだったかなと思います」
――そういった本質は、お若い頃から変わっていない?
戸崎騎手「まぁ、そうですよね。ちょっと勘違いではあるんです、常に(笑)。勘違いしていたら、うまくいっちゃったなという感じで。だって、万年補欠なのに、プロ野球選手を目指しているって…ねぇ。おかしな話じゃないですか。勘違いなんですよ」(本書では戸崎騎手の中学生・野球部時代のエピソードが明かされている)
――いやいや、それでもリーディングも取られていくつもGIを勝たれています。その裏側では石崎隆之元騎手をはじめ、たくさんの方々に支えられたと本書にもありました。
戸崎騎手「良い人に出会えたというのが一番です。助けてくれる、支えてくれる人と出会っている、自然とそういう流れになってくれているというのが大きいですかね。持っている部分というか、神様が見てくださっているというか。石崎さんにしても、自分が憧れていたから話しにいった、みたいな本当にシンプルで単純な行動なんです」
――本書でも、苦しいことがありながらも、人の縁などがあって乗り越えられる運の良さのようなものを感じられます。
戸崎騎手「(運は)とてつもなく良いと思います。でも、あんまり運とかそういうふうには考えないですかね。流れが良いな、流れに乗っているかな、というのは感じます。選択を求められたときにも、流れで。こだわりというのは基本的にないので、柔軟に流れに乗っていけるというのは大きいかなと。それが上手く行っているのかなと感じています」
――選択という部分では、本書で『レモンポップかドライスタウトか』という場面(2023年のフェブラリーステークス)について明かしている一幕もありました。
戸崎騎手「(ドライスタウトを)選んで、負けてしまっているので。悔しさはありますし、(レモンポップに)乗っていたらなというのも多少は思いますけど。でも、そんなことを思っていたからといって何にもならないので。馬を選ぶときには気を付けようとは思いますけどね」
――ただ、昨年はレモンポップと同じ陣営からナルカミを頼まれて、ジャパンダートクラシック(JpnI)を制しています。
戸崎騎手「それもひとつの流れだと思うんですよね。うまく説明できないけど(笑)」
「石崎さん(石崎隆之元騎手)が僕の道を切り拓いてくださった」

――本書のタイトルにもなっている『やり抜く力』。これと決めたら『やり抜く』という部分はまさに今の戸崎ジョッキーを作り上げた本質なのかなと感じます。
戸崎騎手「みんな『この道でいいのかな』と考えたりすると思うんですけど、じゃあその前に『自分はなにをやりたいの?』という。『やりたければ、やればいいじゃん』と、そこに突き進むしかないと僕は思っているので、『この道でいいのかな』みたいなのは僕には無いんですよね。『やりたい』から、『じゃあ今なにをやるべきか』という考え方なので」
――もしかすると読者の中には「そこまで自信は持てない…」という方もいるかもしれません。それでも『やり抜く』ためのポイントはありますか?
戸崎騎手「もし途中で『なにか違うな』と思ったら、違う選択に切り替えても良いと思うんですよね。『やりたい』のであれば。いちど違う道に行って、新しい道が見つかったとしても、最初に向かっていったことは決して無駄じゃない。絶対に役に立つと思っているので」
――本書には戸崎ジョッキーが「憧れ」と慕う石崎元騎手からもコメントが寄せられています。曰く「道を切り拓く強い気持ちがある」と。
戸崎騎手「突き進んでいると、自然と道が拓けてくれているという感覚ですかね。自分が拓いてやろうというのは一切思っていないですし、逆に石崎さんが僕の道を切り拓いてくださった方だと思っています。もう背中をずっと見てきて、カッコイイなあと思っていましたし。競馬の基本を教えてもらい、競馬を見ながら感じ、石崎さんしか見ていなかったというくらい勉強させてもらいました。今も『ケガなく乗ってほしい』といつも言ってくださっています」
――さらに福永調教師からも「我流の極みを追求して」と本書に寄せるコメントがありましたね。
戸崎騎手「祐一さんに答えていただいたのがすごく有難かったですし、嬉しかったです。こういう話ってなかなかできないですし、しないですからね。そうやって思っていてくれたんだという。(我流の極みという言葉は)しっくり来ています。決して自分が上手くてここまで来ているというわけではなく、クセが強い特殊な乗り方をしていると自分でも思いますし。だからこそ『我流の極み』というのは良い言葉をいただいたなと」
――いよいよ3月26日に発売ということで、書店に並ぶと今まで戸崎ジョッキーのことを知らなかった方々も手に取るきっかけになるかもしれません。本書を通じて伝えたいことは。
戸崎騎手「タイトルにもありますが『やり抜く』ってすごく大切なことかなと思います。自分がやりたいことは何なのか、そこを貫いていけたら道が拓けるというか。うまくいかないこともあるでしょうけど、やり抜こうよ、と。今なにをやるべきかというのを大切にして、参考にしてもらえたらなと思います」
――また、戸崎騎手を毎週見ている競馬ファンにも本書についてアピールをお願いします。
戸崎騎手「恥ずかしながら、本を出させていただくことになりました。ここまで語っているというのもなかなかないので、僕・戸崎圭太をより知ってもらえるきっかけになってくれたら良いなと思います!」(後編へ続く)

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