【安田記念レース回顧】主役不在のマイル路線 サトノアラジン、大外一閃で悲願のG1奪取!

2017年6月4日(日)東京競馬場・第11R・安田記念(G1・3歳上オープン・芝1600m)は、7番人気川田将雅騎手騎乗サトノアラジン(牡6・栗東・池江泰寿厩舎)がクビ差差し切りG1初制覇。2着には連覇を狙って逃げ粘った8番人気ロゴタイプ(牡7・美浦・田中剛厩舎)、3着に3番人気レッドファルクス(牡6・美浦・尾関知人厩舎)のG1馬2頭が入った。勝ちタイムは1分31秒5(良)の超高速決着。4着グレーターロンドン、5着エアスピネル。1着から5着まで全てクビ差という大接戦を直線最後方から大外一気、上がり3ハロン最速の33秒5で差し切ったサトノアラジンが悲願の戴冠となった。

デビュー時から大器と期待されながら、G1で大きな不利を受けるなどココ一番で勝てずにモヤモヤっとしたまま6歳となったサトノアラジン(父ディープインパクト、母マジックストーム、母父ストームキャット)。前走は苦手の重馬場で人気を裏切って大敗し、今回は7番人気と伏兵扱いに甘んじていたが、外も伸びるパンパンの良馬場、不利の少ない外枠と好条件を生かし、持ち味の強烈な末脚で大外を一閃!スカッとするレースぶりで快勝しG1ホースの仲間入りを果たした。今回は、エリザベス女王杯でも全姉ラキシスをG1へと導いた川田騎手が馬のリズムに合わせてスムーズに後方を追走、直線も詰まることの無い大外を選択し、坂の途中では絶望的ともいえるロゴタイプとの差を一気にひっくり返す渾身の追い込み。キレにキレた愛馬を信じた人馬一体の騎乗だった。

●川田将雅騎手コメント
「やっと勝てました。去年からずっと乗せていただいて、トライアルは勝つことが出来ていたのですが、去年の香港合わせG1の3つは思うような競馬が出来ずに、今年の初戦も良い形で終わることが出来なかった。今日は馬場も枠もこの馬にとって望むべき形になりましたから、ここでこそという思いで乗っていました。非常にスムーズに走ってくれていましたし、いつでも外に出せる道はつくることが出来ていたので、後はそのままリズム良くということだけを思っていました。
4コーナーから手応えは抜群に良かったですし、なかなかロゴタイプはしぶとく、すぐは交わさせてくれなかったですけど、ゴール盤までにきっちり届いてくれると信じていましたから、本当に気持ちよく乗せてもらいました。能力の高さはずっと分かっていたことではありますが、これだけ展開やいろんな面がかみ合わないと能力を発揮することが難しい馬なので、ぜひ次のG1の時もこういう良い形で競馬が迎えられるといいですね。天気と枠に期待したいと思います。」

2着に逃げ粘った昨年の覇者、7歳の古豪ロゴタイプも持ち味を存分に発揮した。まるで昨年のVTRを見るかのように最内をスルスルと伸びた直線は、完全に勝ったと思わせる完璧なレース運び。しかも、昨年のようなスローペースではなく、超高速決着のラップを踏んでなお坂でひと伸びして34秒4でまとめたのには驚かされた。よっぽど府中のマイルと相性が良いのかもしれない。まだまだマイル路線の主役を張れる存在だ。また、そんなレースを演出した田辺裕信騎手の手腕も見逃せない。先頭を主張して道中のペースをコントロールし、先週のダービーでマイスタイルが見せたような最内での逃げ粘りであと一歩のところまで魅せた絶妙な配分は、今年“乗れている”騎手の真骨頂だった。

3着のレッドファルクスもさすがはG1馬。直線を向くまで内に居たはずが、最後の最後は勝ったサトノアラジンのさらに外からの追い込み。直線坂の途中でワープするかのように外に持ち出して伸びてくる様子は、久々の“デムーロ・マジック”だったが、前が開く僅か数秒の間待たされた事が最後まで響き勿体無かった。前走の京王杯SCで見せた豪脚は久々のマイルでも光り、こちらも先々レース選択の幅が広がる走りだったように感じる。

スタートで、7番グレーターロンドンがやや出負け、4番アンビシャスも行き脚つかずに最後方へ。内枠の2番ディサイファ、3番のサンライズメジャーが行きかけるのを制して外枠16番のロゴタイプがハナを主張。結局、ロゴタイプが行き切って1馬身リード。ブラックスピネル、ヤングマンパワーも先行、その直後に4週連続のG1制覇がかかる1番人気ルメール騎乗の15番イスラボニータがつけてレースは流れる。18番ステファノスは中団、グレーターロンドンが中団やや後ろまで押し上げ、レッドファルクス、サトノアラジン、エアスピネル、アンビシャスが後方待機で4角へ。

ロゴタイプが引き連れた馬群は一気に凝縮して直線の攻防。サトノアラジンはまだ大外の最後方集団。エアスピネル、レッドファルクスが内に潜って坂に差し掛かる時、ルメールのイスラボニータは馬場の真ん中で包まれて前が開かない最悪の展開。残り400mで馬群が横一線になった時、最内のロゴタイプがスパート。一気に4馬身のセーフティリードを作って坂を上る田辺騎手の“まんまと”な展開に、脚を使わされた中団までの馬たちはバッタリ。イスラボニータが依然として前が開かずもがく中、大外からサトノアラジン、真ん中からグレーターロンドン、さらに外に出したレッドファルクスの追い込み勢が畳み掛ける。

しかし残り200mでもまだ粘るロゴタイプまではおおよそ3馬身と絶望的な差。今年もロゴタイプの逃げ残りかと思われた坂上で一気にサトノアラジンが鬼脚で迫った。レッドファルクス、グレーターロンドン、内からエアスピネルも強襲し、サトノアラジンがクビだけ前に出たところがゴール!歓喜のG1奪取となった。逃げたロゴタイプ以外は、5着までの全ての馬が11番手以降に控えた追い込み馬で、着差がクビ、クビ、クビ、クビの大激戦。6着も追い込んだ香港馬ビューティーオンリー、7着が中団に控えたステファノス、終始行き場を探して詰まった1番人気ルメールのイスラボニータは8着まで。5番人気のアンビシャスは良いところ無く15着に敗れた。

勝ちタイムは1分31秒5(良)と、レコードまで0.2秒の超高速決着。昨年があれよあれよのロゴタイプ逃げ切りで、前々週前週のオークス・ダービーが前残り競馬だっただけに、どの馬が逃げてどの馬が捕まえにいくのか?という騎手同士の駆け引きが注目されている中で、堂々と自分の形を主張した田辺騎手の好騎乗がレースを引き締めた。スローの展開も予想されただけに、よどみない流れを演出し、さらに自分で動いて最後まで粘り通したロゴタイプはやはり自分の形になれば強い。それを上がり最速の33秒5でキッチリ差し切ったサトノアラジンは、池江調教師に「これだけの馬にG1を勝たせられなかったら調教師失格」とまで言わしめた逸材。ようやく不利の無いレースを大一番で見せて大輪の花を咲かせた。なかなか結果が出ないレースっぷりでも、馬を信じて愚直に追い込んだ川田騎手の執念が実ったといえよう。

3着に敗れたとはいえ距離がギリギリかというレッドファルクスを持って来たデムーロ騎手もさすがだった。位置取りの妙で武豊騎手が追い出せずに惜敗したこと、神っていたルメール騎手でも進路を塞がれて何も出来なかったことを思うと、騎手同士の小さな駆け引きが着順を大きく変える競馬の難しさが垣間見えた。また、重賞初挑戦がいきなりのG1で、しかも出遅れながら僅差の4着と大善戦だったグレーターロンドンは、蹄葉炎という死の難病から復活した奇跡の5歳馬。今後、使うレースも慎重に検討されるとは思うが、高い能力は疑いようが無く、今後注目の1頭である事は間違いない。